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発声に基づく歌唱を学び、音色を磨き上げる声楽芸術を目指す ~楽器へ弾き方が求められる様に、歌唱も声楽発声と云う楽器を携え~

掲載日2021.05.13
最新研究

教育学部 音楽教育科
准教授 米谷 毅彦
声楽

2019年9月15日 新国立劇場の出番前に楽屋にて、シャブリエ作曲 歌劇「エトワール」シロコ役に扮して

声楽と云う「楽器」について

一般に「歌」も「合唱」もよく耳にする言葉ですが、「声楽」となるといきなり専門的な用語に感じられる様です。
さて音楽芸術の再現として解かりやすいのは、先ずは楽器の演奏となるでしょう。
例えばベートーヴェンのピアノソナタを好きな人はその楽曲を思い浮かべるだけではなく、旋律の一部を口ずさんだりする事もあるでしょう。
又メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の独奏部分についても、同じ様な事があるかも知れません。
しかし目の前にピアノやヴァイオリンを出されたとして、口ずさむように簡単に弾く事が出来る人は限られてしまうのは言う迄もありません。
つまりそこには弾き方が必須であり、その習得は一朝一夕で叶うものではないからです。
声に出して口ずさむ行為から音楽芸術を成立させる歌唱への道程、そこへ介在する「声楽」と云う楽器の奏法を学ぶのが当声楽研究室の研究対象です。

2017年3月27日 東京荒川少年少女合唱隊を率いて2度目のオーストリア公演、ウィーン?フォルクスオパー児童合唱団とのジョイントコンサートを指揮した時の現地街頭ポスターより

自分自身の身体が楽器です

自分自身が楽器ですから一口に奏法と言われても直ぐにはピンと来ないでしょう、そこで先ず学ぶのが身体の仕組みと発声の技術です。
客観的に手にする事が出来る楽器と異なり自らの肉体を駆使するのですから、目に見えない何かを掴もうと忍耐の時間を要するのは想像に難くないでしょう。
しかし楽器本体を常に携えているとも考えられ、その意味では様々な試行や確認を日常生活の中で出来るとも言えるのです。

2017年3月30日 東京荒川少年少女合唱隊を率いて2度目のオーストリア公演中、映画「サウンド?オブ?ミュージック」大団円で有名なザルツブルクのフェルゼンライトシューレでエーデルワイスを無伴奏演奏の指揮

研究室で行われる声楽実技の個人レッスン

ではどの様に指導及び訓練が実践されているのかと云うと、先ずは他の楽器群と同様に国際的に優れた練習曲集を用いて発声技術の伝授です。
しばしば用いられるのはコンコーネ50番や25番或いはパノフカやサルヴァトーレ?マルケージ他ですが、学生の進捗度や個々の課題に慎重に対応しながら当然指導者が独自に創作する音型や楽節を演習する事もあります。
ともあれ声楽と云う楽器の最大の特性は、自らの音声を客観的に聴かれない事です。
個人レッスンでは豊かな経験に基づく指導者の研ぎ澄まされた耳と一方で受講生の側は、一声一声へ与えられる助言を自らの身体との関わりで全神経を集中させて理解習得する緊張感のある現場となります。

2017年5月28日 新国立劇場の出番前に楽屋にて、オッフェンバック 作曲 歌劇「ラインの妖精」コンラート役に扮して

ヨーロッパの歌劇場をはじめとする舞台経験を生かして

音声学的な数値には様々な根拠や参考資料を求める事が出来ますが、その瞬間に出ている声の響きの良し悪しと原因はその場に立ち会う生身の人間でしか実感出来ない多岐に渡る要素の認識が必要です。
そして殆どの場合は指導者の経験に基づく耳が音色を判断し、且つ研究の成果としての対策を講じる事で学習者の技術は一歩一歩前進して行きます。
当研究室では数年間に渡りヨーロッパの歌劇場やコンサートで独唱歌手を務めて来た米谷毅彦(まいやたけひこ)が、教会音楽に起源を発する「響き」の美しさを求める発声技術を指導しております。
世界中のオペラ歌手達と各国で様々な舞台を踏んで来た経験が、成長過程の声楽学習者へ適確なアドヴァイスを与え実りあるトレーニングの積み重ねが確実な成果を約束致します。

2019年3月30日 東京阿佐ヶ谷の久遠キリスト教会にて、岩手県出身の役者による朗読及び作曲家による編曲とピアノで独唱会を開催

学校教育の現場で求められる発声指導と合唱指揮

さてここで声楽を学ぶ学生の多くはその研鑽を通じて、学校教育の現場へ羽ばたいて行く道程が想定されます。
とすればせっかく学び身に付けた声楽技術は他ならぬ、合唱芸術の指導そして創造として実を結ぶべきでありましょう。
当研究室では60年近い歴史を誇る東京荒川少年少女合唱隊の常任指揮者兼指導者代表を務めている米谷毅彦(まいやたけひこ)が、児童合唱から成人の合唱団員迄の発声指導及び国内外のあらゆる範疇の合唱作品を手ほどきしております。
同隊を率いて2度に渡るウィーン遠征公演の成功や全国の合唱コンクールや音楽祭の審査そして講評他、数多くの経験に基づく合唱作品の解釈さらには指揮法の掘り下げは必ずや教育現場での実践に役立つものとなります。

2016年4月2日 東京荒川少年少女合唱隊の創立50周年記念で委嘱された合唱組曲「五つの詩 彷徨(さまよ)う時」、作詩 米谷毅彦(まいやたけひこ)と作曲 真島圭(ましまけい)で同隊第145回定期演奏会のサンパール荒川大ホールにて初演

参考資料

岩手大学教育学部研究年報 第 81 巻( 2022. 2)1 ~ 18
声楽における母語以外の母音の理解と応用についての一考察

―ドイツ語の音節と日本語モーラに基づく日墺の歌唱指導を事例として―